正式に許可を受けて兼業副業したいな。どうやって許可とったらいいんだろ。基準とかあるのかな。
こういった疑問に魂を込めて答えていきます。
この記事を書いている僕(前田ひろあき)は
- 元公立中学校教諭(現役時代からYoutube発信)
- 教員の兼業を推進する事業作り
- 小学校非常勤×個人事業主
- 兼業中の教員への取材多数
- 教員の兼業促進コミュニティ運営
越境する先生を増やして教育をアップデートしたい。
って感じで、先生の兼業を当たり前にした過ぎる僕が実体験・法令・全国の先生へのインタビューをもとに教師の兼業申請について完全解説します。
💡この記事でわかること💡
- 教員の副業・兼業のルール全般
- 教員の許可アリ兼業の実例
- 兼業申請する際の手順
記事を最後まで読んでもらうと、教員の兼業申請ついて職場で一番詳しくなれます。間違いなく。
そのうえで、あなたが今後どのように許可を得るための動きをすればよいかが掴めます。
あなたが教員の兼業の第一歩を踏み出し、教育の多様化へのファーストペンギンになってくれることを願ってやみません。
では早速見ていきましょう!!
学校の外の活動も大事よね。
結論:第3者からの依頼は申請しやすい。許可の基準は…
当サイトを起点として全国のフルタイムで働く先生に兼業依頼書を発行し、兼業申請を提出していただく試行を何度か行いました。
第三者からの依頼文があると兼業の申請を出しやすい
これは兼業申請する先生側の気持ちの話なのですが…。
第3者機関からの依頼書があった方が堂々と申請しやすいようです。
例えば出版社などから執筆の依頼などがあると許可は出やすそうですし職員としても許可を得にいきやすいですよね。
ポイントは「こういう団体からこんな依頼を受けているんです」と説明しやすいということです。
当サイトが運営するコミュニティの参加者の方も、「こういったかたちで依頼してもらえるのはやりやすい。」とおっしゃられていました。
許可の基準ははっきりと決まっていない
結論からお伝えすると、「許可の基準ははっきりとは定まっておらず曖昧である」というのが正直なところです。
「A自治体ではおりていた許可がB自治体ではおりない」ということも起り得ます。
また同じような依頼内容の兼業であっても依頼する側の権威性や、講演内容のわずかな差によって棄却されることもあります。
法律の条文だけを見れば、兼業の許可申請は要件さえ満たせば通りそうに見えるのですが、2022年現在は自治体によって、ケースによって個々に判断されているというのが実状です。
ちゃんと基準決めてる自治体はないの?
全国の市区町村の20%くらいは基準を設けて公表してるよ。
総務省の営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する実態調査では1788の市区町村のうち、基準を設けて内外に公表している自治体は353か所であるという調査結果が公表されました。
これは全体の約20%にあたる割合です。
教師は公務員の中でも副業がしやすい
実は兼業している先生はけっこういます。
それは教員が他の公務員に比べて兼業をしやすいからです。
なぜ他の公務員と分けられているかというと、教育公務員特例法という法律によって教員だけは兼業の範囲が少し広げられているからです。
ただ、実際問題として許可が下りるかどうかは自治体の裁量です。
「法律上は兼業しやすいけど実際の許可が下りやすいかどうかは自治体による」が正しいです。
では、簡単に兼業に関する法律を解説しておきます。
地方公務員法
教員を含む公務員は地方公務員法によって副業がしにくいことが一般に知られています。
兼業に関わる地方公務員法は以下の通りです。
- 営利企業等の従事制限
- 信用失墜行為の禁止
- 守秘義務
- 職務専念義務
地方公務員法で定められている内容のうち、上記の4つが副業禁止の根拠になるとされています。
許可を受けなければ副業してはいけませんし、その他制約があるので許可のハードルもそれなりに高いです。
許可の基準や判断は各自治体にゆだねられています。
教育公務員特例法17条
公務員の中でも教育公務員は教育に関する兼業は許可されやすいという特徴があります。
教育公務員は、教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる。
教育公務員特例法17条より
教育書の執筆や教育系の講演会をしている先生がたまにいますが、上記の法律をもとにしています。
そのうえで許可を受けて兼業をしている、ということです。
その他不動産に関する決まりなど、教員や公務員の兼業に関する制度の詳細は「教員の副業ルールと具体的な始め方を完全解説」にまとめていますのであわせてご覧ください。
教員の兼業許可が得られた事例
ここからは当サイトの取材や運営するコミュニティの情報交換で明らかになった、実際に許可を受けて行われている教員の兼業の事例をみていきましょう。
大きく分けて3パターンあります。
- 第三者から依頼されるパターン
- 自ら営利企業を営むパターン
- 許可を必要としないもの
1つずつご紹介していきます。
第三者から依頼されて兼業するパターン
記事の最初の方でも紹介しましたが、これが最も多いパターンであり、許可申請をする際の心理的ハードルが最も低くなります。
具体的には以下のパターンが多いです。
- 本や教育系の執筆依頼
- 教育技術などの講演依頼
- 大学からの非常勤講師の依頼
特徴的なのは「権威性のある第三者から依頼される伝統的な兼業」であるパターンが多いということです。
当サイトが運営する「シン・教員」オンラインコミュニティでは当サイトのコンテンツの制作を公立学校の先生に依頼するという取り組みを行っています。
教育に関する兼業を第三者の立場から依頼することで、学校の先生に学校外の活動をしてもらう機会をもってもらう…という狙いがあります。
色々と課題点も見つかっている試みではありますが、興味のある方はぜひ紹介ページをご覧ください^^
自ら事業を営むパターン
雇われたり依頼されたりということではなく自分で何らかの事業を持ってしまうというパターンですね。
私が知っている例は何人かおられますが、その中でも取材させていただいたお二人を紹介しておきます。
- 一般社団法人まなびぱれっと代表理事 小泉しのぶ 先生
- 英語教員がちサロン主催 江澤隆輔 先生
小泉先生は学生時代から社会活動を続けてこられて、採用後に社団法人を設立されました。
江澤先生は著述・コミュニティ運営・講演活動と様々精力的に活動されていますが、採用の直前に家業を継がれた際に法人(会社)を運営されることになったそうです。
自分から法人を立ち上げる場合もあれば、家業を継承する場合もあります。
お二人の取材記事は以下のリンクからどうぞ。
教員の兼業が認められやすい形態
自ら営む事業の形態は様々あります。
教員が営む可能性のある形態は以下の通りです。
- 個人事業主
- NPO法人
- 一般社団法人
- 株式会社
- 合同会社
上記の中で比較的認められやすい形態はNPO法人と一般社団法人です。
これら二つは非営利法人ということになっており、どちらかというと社会貢献活動の意味合いが強い形態です。
一方でその他三つの形態は基本的に営利を目的としているため、教員(公務員)が自ら立ち上げるための許可をとる際、妥当な理由を説明する必要があります。
採用後立ち上げた人はNPOと社団法人が多いで!
個人的には、営利活動そのものに学習効果があると考えているので、社会貢献活動以外の兼業もどんどん認められるようになってほしいと考えています。
許可を必要としないパターン
兼業やそれに類するもののうち一部許可を必要としないものがあります。
以下の通りです。
- 不動産、売電(一定規模以下は許可不要)
- 投資関連(株式・FX・仮想通過など)
- 不用品の売却(自動車の下取り・メルカリ)
- 社会活動などの実費弁償(交通費など)
- 単発の講演の謝金(少額)
- 消防団の活動
- 無報酬の非営利法人活動
❶~❸についてはコチラの記事で詳しくまとめています。
社会活動などの実費弁償
部活動の公式戦の審判などで少しだけお金をもらえる場合がありますが、それがこのパターンです。
労働に対する対価ではなく、往復の交通費の弁償を受けるなどといった場合は許可が不要となっています。
単発の講演の謝金
これ実はかなり耳寄り情報です!!
総務省HPの資料に兼業許可を要しない行為であることが明確な事例②と題してこんなことが書かれていました。
主事級の職員が、母校である大学の就職セミナーで講師を務めた。同校卒業から5年前後の社会人という条件に基づき選出されて単発で引き受けたもので、講演の謝礼は8千円程度。
総務省HP:「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する調査(勤務条件等に関する附帯調査)」の結果等について 別添2
単発で行われる講演で謝金を受け取ることについては許可が必要ではないそうです!
これについては当メディアのコミュニティ「シン・教員」でも今後検証していきます。
自治体のローカルルールのレベルでは許可を求められることもあるかもしれません。
消防団の活動による賃金
非常勤の消防団として活動した際に受け取る賃金についても兼業の許可が不要です。
根拠として先ほど紹介した資料の7pに以下のような文言も書かれていました。
消防団等充実強化法(消防団を中核とした地域防災力の充実強化に関する法律(平成25年法律第110号))第10条第1項において、職員から消防団員との兼職の申請があった場合は、職務の遂行に著しい支障がある場合を除き、任命権者はこれを認めなければならないこととされているほか、同条第2項では、地方公務員法第38条第1項に基づく任命権者の許可は不要とされている。
総務省HP:兼業許可を要しない行為であることが明確な事例②
こんなんよく見つけたな…。
非営利法人の役員を無報酬で
社団法人やNPO法人などの非営利法人の役員を無報酬で行う場合兼業の許可は不要です。
これ知ったときは驚きでした…。
地方公務員でありながら兼業に関する研究をされている島田正樹さんのnoteで紹介されています。
情報元は総務省の資料からなので信憑性抜群です。
こちらの総務省資料6ページの左側に書かれています。
注意が必要なのは、総務省資料でこう書かれてはいても所属所がどう判断するかはわからないというところです。
ごめん、法人て何?
簡単に言うと「会社」のこと。会社にも色んな種類があるよ。
訴訟を経て兼業の許可を勝ち取った例
兼業の許可申請が通らなかったため訴えを起こし、最終的に兼業の許可を勝ち取った先生もいます。
育児の漫画などを配信されているパパ頭さんという方です。
日々のつぶやき。
— パパ頭 (@nonnyakonyako) June 3, 2022
食いしん坊。 pic.twitter.com/0zLCKBDyOA
優しいタッチやな。ほっこりする。
僕も育休経験者として共感する部分が多かったよ!
男性の育児参画は公益性の高いテーマですが、当初兼業は認められなかったそうです。
パパ頭さんの兼業に関する訴訟の経緯をまとめると…
- 男性目線の育児漫画をSNSで発信
- 出版社から出版依頼が
- 校長と相談のうえ兼業届提出
- 委員会から口頭で「認められない」と回答
- 訴訟して是非を問う
- 和解のうえ許可が下りる
流れは上記のとおりです。
一方で細部はかなり参考になる部分も多いので詳しく見てみてもらうと発見があるはずです。
詳細が知りたい方はパパ頭さんのブログや訴訟を支援した団体のページをご覧ください。
パパ頭さんの奮戦を当サイトでもつないでいきます!
日々のつぶやきの外側。(2/2) pic.twitter.com/STZARm2TQR
— パパ頭 (@nonnyakonyako) June 19, 2022
兼業許可申請の様式
兼業許可申請の様式は所属する自治体によって様式は違います。
様式そのものに手軽にアクセスできる自治体からそうでない自治体まで様々です。
兼業の必要性が出てきた場合は、学校なら事務職員or管理職に相談すれば様式を受け取ることができるはずです。
東京都は内外に対して様式がオープンになってたで。
兼業許可申請の方法
ではここからは公務員として実際に兼業の申請をする際の手順をお伝えします。
とはいっても基本的には校長先生に相談したうえで様式に則って許可申請を出すだけです。
ただ、校長先生だけでは判断できないことも多く教育委員会に相談したうえで「やらない方が良いんじゃないか…」となってしまうこともあります。
ですので、しっかりと準備をして手順を踏みつつ許可申請を出すことで、不許可になる要素を削っていくことが大切です。
どんな兼業を行うか明確にする
どういった兼業を行うか、明確にしておく必要があります。
具体的には…
- 業務の内容
- 受け取る金額
- 依頼者
- 従事する時間や場所
こういったことをはっきり説明できる状態にしておきます。
第3者からの執筆依頼などであれば掲載される媒体や依頼者の情報などが記載された依頼書を受け取ると話は早くなります。
金額が大きすぎたり、従事する時間が長すぎたりすると不許可になりやすいです。
正式な書類を用意する
主に用意すべき書類は、依頼書・兼業申請の様式この2つです。
第3者からの依頼であれば依頼書をもらいましょう。
基本的には職員がアクセスできる様式集などにあることが多いはずです。
自治体によっては「上長に聞かないと出てこなかった」というパターンもありますので、この段階で何の兼業をするかはっきり説明できるようにしておくべきです。
上長に相談する
書類自力で用意できる場合はすべてそろえた状態で一度相談しに行きましょう。
唐突に提出すると向こうも寝耳に水なので驚いてしまうはず。
相談に行って裁定をお願いしなければならないということからも、第三者からの依頼があると兼業届を出しやすいわけです。
自分で企画した兼業を申請する場合は社団法人を作ってしまう方が良い、というのが現段階の結論です。
相談に行った際にスムーズに事が運ぶように、当然のことながら普段の業務はしっかりとこなしておかなければなりません。
提出する
校長先生のOKをもらえたらいよいよ書類を渡して委員会にお伺いを立てます。
このとき、校長先生にしっかりとプッシュしてもらえるように良い関係を築いておきたいですね。
東京都の高校教員であるパパ頭さんの場合は、校長先生にも背中を押してもらって提出したものの、口頭で許可できないという連絡が来たために裁判にまで発展しました。
およそどこの自治体も提出後に数人の裁定者のチェックが入るようで、誰が見ても公務員としてふさわしくないと判断できるよう書類を作成することが重要です。
実際のところ許可は下りるのか
現時点での解は…
- 依頼主に権威性がある
- 公益性がありそうな内容
- 信用失墜にならなさそう
- 報酬が多すぎない
このあたりの条件が揃うと許可は下りやすいようです。
逆に一点でも不足していると許可のハードルは高くなるでしょう。
このあたりに関しては運営するコミュニティでもノウハウを蓄積していますので、興味のある方は一緒になんかしましょう^^
まとめ
この記事では教員の兼業申請についてまとめました。
現段階では…
- 基準は曖昧な場合が多い
- 権威性のある第3者からの依頼◎
- 教育の関連度が高い方が良い
- 自ら営む場合は社団法人がおススメ
といった状況で、
兼業申請が必要なものとそうでないものの区別は国の方針では定まっているものの自治体によってバラツキがあります。
当サイトでは引き続き教員の兼業が当たり前になる世界線を目指して情報発信を続けていきます。
教育の未来のために、先生方がもっと社会と関われる世の中にしたい。
そのために伴走していきます!
自分のためだけの副業じゃないんやな。
自分と大事な人のため、そして教育と世の中のためさ!
最新情報については各種SNSでもお伝えしていきますのでよろしければフォローしておいてください^^
また、個別で質問などある場合はお気軽にお問い合わせください!
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