こんにちは。教員コンサルタントのマサムネです。
教員が安定しない職業である理由を5回に分けて解説します。
今日はその一回目です。
教員が実は安定しない職業である理由の1つ、「教員は人的資本が蓄積しない」について解説します。
人的資本とは
人的資本とは簡単にいうとお金を生み出す力のことです。
こちらの本で紹介されていますが、一般的に労働者は労働市場に自分の人的資本を投入して金融資産、つまりお金を得ます。
教師の人的資本はそれなりです。
一般的な正規社員の平均年収が500万円程度なのに対して、正規教諭の平均年収は640万円ほどです。
また、人的資本を割り出す際に継続性と安定性によってその人の人的資本は変化してしまいます。
例えば年収1000万円だったとしてもお笑い芸人だったとしたらどうでしょう。
安定性と継続性に欠けるため、人的資本の算定の際にはこの人の将来的な価値は割り引かれてしまいます。
教員の人的資本
一方で教師は公務員です。
給料は微増を続けますし、倒産したり解雇されたりすることはありません。(懲戒免職などは除きます)
平均的な給与水準よりも収入が高く、安定性もある教師の人的資本はある程度の水準だと言えるでしょう。
ただし、「辞めなければ」という条件の下での話になります。
また別の回で詳しく書きますが、現代においては一生教師を続けるということがそもそもかなり難しいのではないかと考えています。
1つは精神疾患のリスクで、文科省のデータを紐解くと精神疾患によって休職や退職をした教師の割合は全体の1%程度です。
年間100人に1人の割合で仕事から離脱している人がいるということです。
これは一般の会社員全体の平均と比較すると1.5倍以上の確率です。
また、全退職者のうち定年や早期退職をした人の割合はおよそ60%。
あとの40%の人たちは勤めきる前に教職から離れているわけです。
安定性の部分に陰りが見えます。
人的資本の応用力
他の職業の場合をみてみましょう。
あるシステムエンジニアの場合
私の知人のシステムエンジニアの方のケースです。
その方は新卒で大手自動車メーカーの子会社のシステムエンジニアとしてキャリアをスタートさせました。
大手自動車メーカーの企業内の部署のようなものだったため、この場合の人的資本は教師以上に高かったと言えそうです。実際に年収は同年代の教師の二人分ほどありました。
あるとき諸事情で退職をしますが、転職先も有名な電子部品メーカーでした。そこでもシステムエンジニアの職に就きます。
こちらも世界中にシェアを持つ優良企業ですので、かなりの人的資本を維持しています。
直近では金融系の会社にシステム部門の管理職として転職をしました。
こちらは若い企業なようですが、年収は大幅にアップし人的資本は教師以上に高い水準を保っています。
軸足転職を可能とさせる汎用性の高い人的資本
自動車産業→電子機械製造→金融業界、と業界を渡り歩いていますが、どの業界でも金融資産を生み出す能力は落ちていません。
なぜなら業界は違っても軸としているのはシステムを扱う能力だからです。
こういった転職の方法を軸足転職といいます。
会社が倒産しても、自分がその会社から離れたくなっても、どんな場所に行っても活躍できる能力がこのシステムエンジニアにはあったわけです。
では教師はどうでしょうか。
他で活かしにくい教師の資質
先ほどのシステムエンジニアと同じような軸足転職は教師には不可能です。
それは、教員の能力やスキルが異業種に応用しにくいからです。
厳密にいうと応用できないわけではありません。
保護者や児童生徒対応によってコミュニケーション能力は磨かれますし、マルチタスクをこなす力も相当なものです。
しかし残念ながらそれを一般企業の採用担当者に書類でアピールする術がありません。
転職の一次審査は書類である場合がほとんどですが、何をしてきたのかがわかりにくい教師よりは、似たような業務を経験した人を通過させる方が合理的でしょう。
つまり先ほどのシステムエンジニアと違って、教師は応用のききにくい人的資本しか持っていないと言えるのです。
退職後に気付く、何も持っていない自分
これは私の経験談です。
32歳で退職しました。
自分では様々な能力を持っていると自覚していました。
- 人前で話す力
- プレゼン能力
- 事務処理能力
- IT活用スキル
- 企画力
もちろん今でもこれらの能力を持っていると考えていますが、これを客観的に示す成果を持っていません。
「企画をプレゼンテーションして8000万円の仕事を受注した」
「企業向け研修を年間120回ほど企画運営し、顧客満足度は95%以上だった」
など、具体的にどのような成果をあげてどのように売り上げに貢献したかという客観的根拠が私にはありませんでした。
せいぜい「生徒指導件数を2カ月連続で0件達成」とか「文化祭の舞台主任として保護者満足度の高い公演を実施した」などです。
ぼんやりしています。
成績や受験実績といったものも、公立学校では厳正に比較することができません。
なんらかの数字をひねり出してアピールをしますが、かなり伝わり辛いものが多いのです。
結果、「32歳にして、他業種に応用できる人的資本を持っていない」というかなり残酷な現実に直面しました。
特に優秀なわけでもありませんが在職中は必死に業務を遂行してきました。そんな私ですがこのような事態に陥りました。
そしてこれはどの教師にも起こり得ることなのです。
どのような対策が打てるか
では定年まで勤めあげればいいだけかといえばそう簡単な話でもありません。
人生100年時代といわれるように我々の健康寿命は延びています。
定年退職しても、その後にまだまだ長い人生が待っています。また冒頭で述べたようにそもそも定年までもつのかということも心配です。
今の若い世代では、年金や退職金が減額さることもあり得るでしょう。
退職した後のことに目を向け準備していくことは教員全員が直視しなければならない課題なのです。
ではどのような対策が打てるでしょうか。
金融資産の最大化
まずできることは金融資産の最大化です。
私が退職して困ったのはとにもかくにもお金の問題です。
無計画に退職してしまったのでお金については非常に困りました。
たくわえがあったり、自動的に多少のお金が入ってくる仕組みを自分で構築できていればここで躓くことはありません。
今皆さんができることとしては教員をしている間、つまり人的資本が潤沢な状態のうちに、しっかり蓄財することです。同時に株式や不動産など富の源泉となってくれる資産を持つこと、あるいはその勉強をしっかりと進め小規模から実践していくことが重要です。
好きなことに没頭する
話しは変わりますが私の父親は教師でした。55歳で早期退職しましたが、今は悠々自適にハンドメイド作品を日本全国に旅行がてら売り歩いています。事業としてはプラマイゼロですが、のんびり旅行ができて好きな製作をして、本人は楽しそうに毎日を過ごしています。
実は若いころから休日は趣味に没頭していました。ゴルフ・釣り・木工・自動車・スキー・PC・キャンプ・旅行など、余暇は自分の好きなことに全力を注いでいました。
そのうちの一つ木工を自分の人的資本として活用し、生活費は潤沢な年金、趣味や娯楽は仕事とごちゃまぜにしてしまうというライフスタイルを送っています。
我々世代の場合はもう少し洗練させる必要がありそうですが、趣味も誰かに価値を提供できるレベルまで鍛え上げられれば、十分に人的資本となってくれるのです。
まとめ
労働市場に人的資本を投入して富を得るという考え方は、我々教師にとってはあまり触れることがない感覚です。
しかし、退職のときはいつか必ずやってきます。
その時に、退職金を切り崩して生きながら長生きのリスクにおびえる。。。こんなことは避けなければなりません。
我々教師は応用の効きにくい人的資本を持っていることを自覚し、退職した後の世界のことも想定しておいた方がよさそうです。
蓄財や資産運用について学び、好きなことに没頭することで金融資産と人的資本の両面を高めて生きましょう。
教師が持続的で豊かな職業になるように、明日からも頑張ります^^
第二回はコチラ!
コメント
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[…] コチラの記事で書いたように退職した学校の先生は稼ぐ力、つまり人的資本が小さいですが、非常勤講師をするのであれば時間当たりある程度は高水準で賃金がもらえます。 […]
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