男性教師の育休

公務員の男性よ、育休をとろう。ー元教師が語る男性が育休をとるべき5つの理由ー

男性公務員(教師)で育休ってどうなん?と思っている方に向けて、

筆者が実際に育休をとって感じた&学んだ、男性の公務員が育休をとるべき理由を5つにまとめてお伝えします。

初めにお伝えしておきますが、育休をとるかどうかは各家庭の状況や個人の考えによります。

全ての人に「絶対に育休をとれ」とは言いません。

しかし、僕が育休をとって思うのは、本当にとってよかった。

この子たちのこと妻のこと、(ついでに自分のことも)こんなにちゃんと知れて、考えられてよかったと心から思います。

みんなに育休を広めたい、とろうとしている人の背中を押したい。

そう考えて魂を込めて書きます。

とろうとしている方の背中を少しでも押せれば・・・。

また、パートナーにとってもらいたいたいと考えている人の助けになれれば幸いです。

守るべきもののためにその武器を使え!!

まずはこれを声を大にして言いたいです。

というかもはやとるかどうか迷っていた当時の自分に言いたいことなんですけどね(; ・`д・´)

育休というものは一定の条件以上で雇用されている人、全員が使えます。

パートナーが就労していないとか育休をとっているとかは関係ありません。

子ができた労働者は全員取れます。

逆にいうと記事を書いている2021年時点では自営業者に育休の制度はありません。

また、かなり改善されてきてはいますが、男性の育休に対する世間や企業の認知度はまだまだ低く、

法律で義務付けられているのにもかかわらず、男性の育休に関する規定や前例がない企業が数多く存在します。

僕が「育休をとっています」と会ったばかりの人に伝えると、

「大きな会社にお勤めなんですね」とよく言われました。

そうなんです。世間の認識は未だそのくらいで、従業員も企業も男性が育休をとれることを知りませんし、とれる風土が根付いてもいないのです。

そんななか公務員はどうでしょう。

なかなか育休をとることが一般的になってはいませんが、実は補償ありの育休制度が始まったのは女性公務員が日本で最初なのです。

女性の教職員や看護師といったみなさんのおかげで、女性が育休をとるのは当たり前になっています。

そして公務員は男女で業務内容に差がない場合が多く、女性が整えてくれた育休の仕組みをそのまま男性に適用することは実は簡単にできます。

そういう意味で、

公務員はほかの業種に比べても非常に男性が育休をとりやすい環境が整っている

ということがいえるわけです。

「公務員といえども周りに育休をとったことがある男性がいない」という方もいるでしょうが、

公務員は法律でガチガチに固められている反面、法律でガチガチに守られてもいます。

まだ周りで制度を使った人がいないだけで、あなたが公務員である以上間違いなく育休はとれます。

つまり公務員の男性にとって育休は家族のために使える最大の武器の一つであるといえます。

生まれたばかりの我が子を、仕事に忙殺されずにしっかりと見てやれる。

出産したばかりのパートナーをしっかりいたわれる。

これは家族を守るために使える命の時間なわけです。

育休をとらない理由に、

「職場の雰囲気が・・・」とか

「今自分が抜けることができない・・・」などありますが。

何を言っとんじゃい!!!

と言いたい!

家族を大事にするための最高の武器をきちんと使わんでどうする!!!!

たった1年や2年かもしれませんが、この1年や2年は戻ってこんのです。

他人に忖度して、本当に大事なものに時間を注げないという風になってほしくない!

この章では若干厳しめのことを主張してしまいましたが、

この後は優しく背中を押すためのトピックを上げていきたいと思います。

これからの育休はキャリアである

僕は育休を取得してみて視野が広がりました。

また、今後の世の中の流れを考えると

育休はキャリアのうちの一つになっていくと考えています。

育休を推し進める政府

実は国の方でも男性の育休は少子化対策の方針の一つとして推し進められています。

なぜそういったことをしているかというと、諸外国で出生率が改善された国では男性がしっかり育児や家事に参加しているからです。

日本人男性の絶望的な家事のしなさ。

育休をとってみてわかりますが、産後女性が一人で自宅にいると孤独になりがちです。

初めての子育てに、家事の負担も重なり追い詰められます。

こんななか、夫が仕事ばかりで家庭の労働に参加しないとなると、、、、

その後の夫婦関係に大きく影響してきます。

夫婦関係の冷え込みは第二子以降の出生に大きくかかわります。

後の章で紹介しますが、これは冗談ではなくきちんとそういったデータも出ているわけです。

ここまでわかっているからこそ、国も躍起になって男性の育児参加を奨励しているのですが、、、

現状、男性の育休が進んでいるとはいいがたい状況です。

育休を推進する先進企業

先進的な企業がこぞって育休を推進する動きを見せています。

これには様々な理由があります。

優秀な人材を確保するため

年々就職人口も減っている中、優秀な人材の確保は企業の生命線です。

そんな中、昨今はワークライフバランスや働きやすさに注目する人が増えています。

優秀な人材を幅広く獲得するために、優良企業こそ育休の制度を整備しているというわけです。

就活生向けの情報の中には「男性の育休取得率top50の企業」なるものも存在するため、

企業からすれば死活問題なわけです。

株価に影響する

株式会社にとって企業そのものの価値を決める株価は非常に大事な視点ですが、

男性の育休が株価に影響を与えるようになってきたことも、また一つ大きな要素です。

カネカの男性社員の妻が、SNSにパタハラの実態を暴露し大炎上しました。

炎上後、カネカの株価は大暴落し、2割減で600億円以上の時価総額を失っています。

また、昨今投資家の間でESG投資という考え方が広がっています。

簡単にいうと企業が社会的責任をしっかりと果たしているかということが企業の価値に影響するという考え方です。

つまり、利益を上げていても環境破壊しまくっていたらダメ。。とか、

すごく設けているけど労働環境はむちゃくちゃブラックで従業員満足度が低い会社には投資しません。。

といった感じです。

この考え方でいくと、昨今の若いビジネスパーソンが育休取得率に注目していることは、

従業員の満足度に関係すると考えられます。

こういった側面からも、時代の潮流に敏感な企業であればあるほど、男性の育休制度を整えようとする動きをしているのです。

育休は内なる多様性を醸成する

ここが最も言いたいところかもしれません。

育休をとるまで僕は、育児がこんなに尊くて大変ものだとは思っていませんでした。

育休をとっていなければ、子育てというものをこんなにはっきりと意識して生きることはなかったと思います。

これこそが前述した男性の子育てや育児のしなさにつながっていると思いますが。

育児をして、大変さや感動・社会の不理解といったものを経験していくと、

「ああ、これまで女性はこういったことを感じながら社会参画していたのかな」と、

女性たちの経験を追体験できたような感覚になります。

育児をする人の立場を経験してみて、その気持ちに共感できる。

仕事に大いに役立つスキルなのではないでしょうか。

チームメンバーにも、サービスを提供する相手にも共感的配慮を行うことができます。

育休は社会貢献である

「育休は個人の権利だけど、押し通されると迷惑だ」

こういったことを言って育児をする人を攻撃する人がいます。

こういった見方は職場の業務単位で見ればわからなくもないのですが、

大きな視点で見るとあまり正当性がありません。

そもそも存在する制度を利用して誰かが不利益をこうむるのであれば、それは制度そのものに問題があることになります。

ここを勘違いして、制度を利用した人を批判したり攻撃したりするのはナンセンスです。

また、そもそも男性の育休は社会貢献であると言ってもいいくらいです。

少子化対策

政府が育休を推し進めているという事実は前述のとおりです。

様々な統計データをもとに、男性の家庭活躍が少子化に歯止めをかけられるであろうということは明らかになっています。

その因果関係が明らかだからこそ、政府は躍起になって男性の育休を推進しているわけです。

具体的な数字や考え方についてはこちらの本が参考になるので、ぜひご一読ください。

簡単にいうと、第一子を出産した後に女性が第二子以降ももうけたいと思えるかどうかが少子化対策に直結しているということです。

で、その気持ちを削いでいるのが我々男性であること。

また、男性はモーレツ社員として働くのが当然だという社会の風土も問題なのです。

これを解消できる可能性があるのが、男性の育休なわけで、、、

育休はサボっているのでも何でもなく、「社会貢献してるんだ」って、胸張って言っていいんですよ。

女性の社会参画推進

労働人口が減っています。

シンプルに女性にもしっかり働いてもらわんと世の中は立ち行かんわけです。

でもね。

女性が安心して働き続けられる状況になっているか、

なっていないんですよ。

もうそれこそ問題は山積なわけです。

特にダメなのが職場の人間の育児への理解の低さ。

特に男性ですね。

自分がその立場になったことがないものなので、

「楽をしようとしているんじゃないか?」

のような発想にすぐなっちゃうわけです。

これすらも男性の育休の推進が解決してくれます。

男性も普通に育児やそれにかかる大変さを経験していれば、

もっともっと働く女性に優しい設計ができると思うんです。

だから我々は、育休をとるべきなんです。

業務の属人化を解消する

よく「明日からオレがいなくなったら仕事まわらんくなるぜ」

みたいなこと言っている人がいますが、

もうこんなのもダメダメです。

明日仮に自分が死んだとして、、、職場がどうなるでしょう?

ちょっと困って、そしてまぁ問題なく回り始めます。

「自分がいないと職場は困るはずだ」というのは幻想というか願望なわけです。

とはいえ多少困るようなカタチになっているとしたら、

それは業務が「属人化している」ということになります。

育休推進は、このことをも解決してくれます。

育休を取得するということは、業務を誰かに引き継がなくてはなりません。

ということは、自分しか遂行できないデザインにしていてはダメなんです。

概ね誰がやっても業務を遂行できる形にできれば、仕事の生産性は向上します。

特に学校の先生は業務の属人化が起こりやすい職種であると言えます。

育休は、このことすらも解決できる可能性をもっているのです。

育休が結婚生活をより良いものにする

男性の家事や育児に対する参加の度合いが、離婚率を下げるといった研究も存在します。

一方で逆のことを主張する研究もあるので、このあたりはまだ正確なことがわかっていないのかもしれません。

ここでは経験談になってしまいますが、

夫婦関係もいいものになるのではないかと思っています。

我が家の場合は夫婦ダブルで育休を取得していた期間があります。

話す時間がとっても多く取れます。

というかコミュニケーションをとらざるを得なくなります。

一時的にギスギスしてしまったことも実はありますが、そのたびに対話を重ねていきました。

何せ職場や趣味への逃げ道がないわけですから。

育児休業をとっているという名目がある以上、育児や家庭を最優先にします。

その結果、プロジェクトのパートナーである妻と、良好な関係を築いていく以外の選択肢がないのです。

しっかり話をし、どちらが我慢をしたりということがないように徹底的に話をすり合わせました。

そうせざるを得ないと書きましたが、しっかり話し合う時間が取れるのも育休の良いところだと思っています。

ここをしっかりとやっておくことで、家庭生活が充実し、職場復帰後も心身ともに安定した状態でよりよく社会貢献ができるのではないかと考えています。

育休は自分の成長につながる

育休は家族を大事にできたり、社会的意義が大きかったりと、いいことだらけです。

さらに副次的な効果として、自分を高めることになるということもお伝えしておきます。

時間効率を意識した動き方

子育てをしていると、時間効率を高めようという考え方が加速します。

僕の場合そうでした。

また、育休中交流を持たせていただいた多くの方々も同じように話されていました。

そのうえで今までに出会ったワーママの先生方を見ると、やはり猛烈に仕事ができる人たちばかりだったなと思い返せます。

担任業務をこなしながら家庭と子育てにもしっかりコミットする。

教師と主婦、二人分の生産性を持って生きておられるということになります。

これはもう、とんでもなくすごいことです。

そのチカラの一端を男性も身に付けられると考えています。

僕も学校では業務の効率化と就業時間の削減に命がけで取り組んでいましたが、

子育てを経験してみると抜本的にやり方が変わるだろうなという気がしています。

圧倒的な優先順位と、やらないことをはっきりとさせる習慣が身についたように思います。

自分と他者の得意と不得意がわかる

仕事をする中でこれもはっきりとしていくものですが、子育てを経験することによってさらに明らかになります。

とりわけ妻と自分の得手不得手の違いをはっきりと意識できます。

僕は突き詰めて深めたりすることが得意なので、料理を作り上げていくことは全く苦ではありません。

でも順番を考えたりすることに余分な集中力を使ってしまい、同時に処理するのが苦手なので片付けなどはうまくできません。

一方で妻は並行処理が得意なので片付けなどはすごくテキパキできます。

その代わりに料理を作っていくことはあまり好きではない・・・。などなど。

自分とチームメンバーの長所や短所をはっきりと意識できるようになりました。

自分の短所はしっかりと把握したうえでカバーするやり方はないか。

例えば僕の場合であれば片付けは苦手なのでそもそも物を増やさないようにしたり、すぐに手放したりということを習慣にしました。

また、どうしても苦手な部分はちゃんと人に任せるようにもなります。

何せ子どもたちはこっちの意図通りに動いてはくれませんから、とにかく効率化とチームワークは必須になってくるわけです。

子育ての経験は自分やチームメンバーのマネジメント力向上につながると考えています。

自己投資ができる

効率化とチームワークを実現できてからの話、さらには子どもたちがまとまって夜に眠ってくれるようになってからの話になるのですが、

うまく時間を管理できれば自己投資も可能です。

子どもは1日に12時間くらいは眠りますが、大人は8時間も寝れば十分なわけです。

この差額の4時間のうち2時間は家事、2時間は自己投資に使えれば儲けものです。

教師をしていたころは忙しすぎてニュースを見る暇もなく、「消費税増税が何月何日から開始なのか」ということを生徒に教えてもらったこともありました。

それを考えれば、多くて2時間ほど読書や勉強の時間をとれるのは非常にありがたいことでした。

僕が具体的に何を勉強したかというと、、、

  • 資産運用、税金、社会保険などのファイナンスに関すること
  • SNSマーケティングの実践、信用経済にかんすること
  • 趣味の車や釣りに関すること
  • インターネットを介して同業種や異業種の方と交流を持ち、価値観を広げること
  • 別領域の教員免許の取り足し

具体的にはこういったことで自己研鑽をすることができました。

育休を終える前に、「育休も君のキャリアの一つだ」と大先輩に言ってもらったことがありますが、まさに僕もそう思います。

まとめ

この記事では男性公務員(教師)が育休をとるべき5つの理由について述べてきました。

なぜ公務員や教師にフォーカスしているかというと、クールビズの取り組みと同じ効果を期待しているからです。

クールビズが流行ったとき、政府や公官庁・役所などが率先して軽装化を進めました。

その結果クールビズは市民権を得て、ネクタイをしていなくて仕事をしていいという風土が出来上がりました。

誰かが率先して風土を牽引する必要があるわけです。

牽引してもらえれば社会も少しだけ変化します。

公務員が公共に貢献する義務を負っているならば、社会を良くしていくために積極的に育休を取得していく責任があると考えています。

だから、堂々と男性育休のファーストペンギンになればいい。

僕はそう考えています。

僕は、周りの同僚や後輩に男性の育休の素晴らしさや意義を伝えることなく退職してしまいました。

その判断そのものには後悔はありませんが、広めることができなかったという一点において悔いは残っています。

この記事が一人でも多くの方に届き、育休を取得する人が増え、豊かで楽しく子育てができる持続的な世の中への一助になれば幸いです。

ABOUT ME
前田ひろあき
教員の複業について日本で一番詳しい者です。 学校の内外を往還する先生を研究実践するNPO「越境先生」代表。 教育系複業家。 現職:任意NPO代表&SchoolTech企業社員&個人事業主/ 過去の職業:複業&小学校非常勤←中学理科教諭←教育大←吉本新喜劇 |