非常勤講師

非常勤講師への差別と非常勤教員が力強く働き続けるための技術

こんにちは、元中学教員で教育パラレルワーカーのマサムネです。

普段は学校教育についてのセミナーや執筆、ブログでの発信を行っていますが、週に10時間程度副業で小学校の非常勤講師をしています。

この記事では正規から非常勤講師になったマサムネが、実体験を元に非常勤の問題点とその克服方法をお伝えします。


これから非常勤講師として働こうとしている人やすでに非常勤講師として活動されている方が、明日からでも実践できる内容をまとめました^^

給与と待遇ー会計年度任用職員ー

非常勤講師は2020年に「会計年度任用職員」というものになりました。ある一定の条件のもとで社会保険に加入できたりボーナスが発生するようになったりという優遇を受けることができます。

一方で以前と同様、給与や待遇面でやや労働者側に不利であるともいえます。

まずは労働者としての問題点をあげていきます。

雇用される際の問題

雇用される際には講師としての登録を行い、自治体からの連絡を待つというのが一般的です。

勤務開始の前日に連絡が来たりすることもザラで、生活の設計をしにくいという欠点があります。

これは経験談ですが、自治体によって契約の際の丁寧さが違ったりします。

A市に面談に伺った際は非常に丁寧に対応していただき、それこそ一般企業の転職面接と同じかそれ以上の印象を受けました。

雇用は入学試験などとは違いマッチングですから、どちらが優位ということはなく使用者と労働者は対等なはずです。

一方でB市では非常に雑な扱いを受けました。

約束の時間に伺うと10分以上待たされた後に、担当者がコピーをとるついでっぽい感じで「もう少しここで待っておいてください」と言われさすがに驚きました。

面談では職務内容の詳細な説明もないままに勤務に関する同意書に押印を求められたので、

「押印の後に職務内容のご説明をいただけるという流れですか?」と確認をとりました。

担当者レベルで変わってくることだとは思いますが、やはりある程度「使い捨て」という意識のある行政関係者はいるのかもしれません。

学校から欠員の知らせを受けて、適宜事務的に人員を補填していくだけのいわば「作業」ですから、細かい配慮などはされない場合はあるのでしょう。

雇用期間の問題

妊婦の軽減や突発的な欠員の補充のために非常勤講師が配置される場合、任期は短期になることが多いです。

3~4カ月の有期雇用であることも珍しくはなく、生活の基盤を作りにくいという側面はあります。

実際私の場合も4カ月程度の契約で、それ以後の雇用はもちろん保証されていません。

現場での運用のされ方の問題


拘束時間が曖昧になる場合が多いのではないかと思います。

非常勤講師は60分1コマに対して時給が発生します。授業が50~45分でその前後5分は評価や準備のための時間ということのようです。

何にせよ1コマの拘束時間は60分でありその業務は授業に限定されているはずです。

例えば高校や中学の場合、時間割によっては空きコマが発生してしまいますがここに給与は発生しません。

1日に2コマしか授業はないのに3コマ拘束されるということは起り得ます。

本来の時給が2800円の自治体の場合、実質の時給に換算すると2800円×2/3=1867円となってしまいます。

しかもその空きコマ、忙しい学校現場の中で何もしないでいるというのはけっこう難しいです(; ・`д・´)

僕の場合もそうで、昼をまたぐ日は給食がありますがここに関しては勤務することができません。

善意でやればいいという意見もありそうですが、例えばこの時間内に何らかの問題が起こったとしても勤務時間外ですからそれについては誰にも責任がとれません。

めちゃくちゃ心苦しいなか、給食の指導はせずにいったん教室を離れて5時間目の授業から再び業務に参加しています。

ただし、この問題に関しては是正され始めている自治体もあります。

名古屋市の中学に勤務されているある非常勤の先生のお話では、実際の授業担当時間の25%ほどは授業準備や評価のための時間が充当されているようです。

12コマ受け持った場合15時間の勤務になり、その時間にはすべて時給が発生し、且つ空白の時間も生まれません。

2020年度に名古屋市で一部の非常勤教員の方が訴えを起こしたそうですが、全国にじわじわと広がっていかないかとひそかに期待しています。。

詳しくはコチラの記事をご参照ください。

雇用のされ方が周知されていない

正規の教員は非正規の教員の雇用形態をいちいち把握していません。

これは僕が正規で働いているときもそうでしたが、再任用の先生や非常勤の先生の勤務条件をつかんだうえで仕事しているわけではありませんでした。

それ以上でもそれ以下でもないのですが、その場にいればやはり頼み事をしてしまいたくなります。正規の先生たちは何も悪くありません。

ただ非正規になって気づきましたが、時間外になっているときに頼まれごとをされるとすごく辛いです。

何せすべての補償や権利を捨ててある程度自由の効く非正規になったのに、ここにきてまで時間外労働を強いられるのか・・・と。

繰り返しますが頼みごとをしている側にはそんなつもりは毛頭ありません。

お互いにコミュニケーションをとる時間が足りていないだけです。

一部の心ない職員の問題

これは今の時代かなり少なくなっていると思いますが、おそらく多少は残っている風習です。

私の経験からB市の面談での出来事もそうですし、ある同僚の先生から「いわばバイト」と言われたことがあります。

うーん。自分もそう思っているし、実際そうなんだけど人に言われるとちょっとなぁ。。。

国は同一労働同一賃金のルールを一般企業に強く求めており、会計年度任用職員という名称に変わったのもそういった部分をはっきりさせるためです。

立場や雇用の形態が違うだけで人間としての価値はかわりません。

「教員採用試験に受かった人」と「そうでない人」のような若干の選民意識も働いているように思います。

僕の場合は教諭としての実務経験があったのである程度リスペクトしてもらえている感はありますが、これが新卒の非常勤だったらと思うと立場の弱さに恐怖を覚えます。

曖昧な有給休暇制度

勤務の日数に対して有給休暇が与えられますが、適切に運用されているかどうかは微妙なところです。

一般に何かの事情で休みをもらうと振り替えて勤務する場合が多いようですが、僕のようなパラレルワーカーの場合、学校にいない時間はほとんど別の仕事で埋まっています。

そういった場合に年休を消化すればとも思うのですが、実際どれだけの年休日数が充当されているのかは雇用の期間などによって変わるようです。

何日の年休がどれくらいあるのかわからず適切に使用できないという状況は、労働者の権利的にめちゃくちゃNGな気がします。

しかし、実際目の前で忙しそうにしている管理職の先生を見るとしつこく尋ねるのも気が引けてしまいます。

なんの後ろ盾もないという問題

僕のように副業として割り切って勤務する分には何の問題もありませんが、ある自治体には講師枠採用試験の要綱にこんな一文があります。

講師として勤務する学校園の校長からの評価を点数に加える

これめちゃくちゃ残酷じゃないですか。

無理な残業や業務外の労働を強いられていたとしても、評価が下がることを恐れて申し出ることができないかもしれません。

これでは採用を盾にとられているようなものです。

非常勤講師として力強く生きていく技術

色んな問題はありますが、後ろ盾がないからこそグイグイと自分で道を切り開くしかありません。

非常勤講師として生きながらも、しっかりと自分の身を守っていくための方法をご紹介します。

あなたの勤務条件を誰も知らない

突き放す言い方ですが、大前提の事実として理解しておいてください。

非常勤講師の労働条件やら細かい勤務時数なんて正規の皆さんは把握していません。

また、残念ながら管理職の先生や事務の方も膨大な量の業務に忙殺されていて、非常勤の制度の隅々まで理解しているわけではありません。

非常勤先生

みんな僕の勤務時間とか気にせず仕事ふってくる

マサムネ

みんなあなたの勤務条件詳しく知らんだけよ~

自分が自分の労働条件にきちんと詳しくなりましょう。そしてそれを知らないだけの人たちに憤らずに、事実を伝えて理解してもらいましょう。

正規の先生

マサムネ先生5時間目は3-2のフォローをお願いします^^

マサムネ

すみません!今日は4時間目までなんですよー

正規の先生

そうなんですか!了解です^^ではまた明日!

学校の先生は基本みんな子どもをしっかり理解しようという人の集まりですから、簡潔に事実を説明したらちゃんとわかってくれますよ^^

あなたはサボろうとしているわけではなく、ルールの中できちんと勤務しようとしているだけです。

そうして確保したあなたの可処分時間はあなたの人生の大切なミッションに充てられます。

自信をもって説明してください^^

労働条件の交渉は採用試験に影響しない

「校長の人事評価が採用試験に影響する自治体もある」と書きましたが、労働条件の正当な交渉に関しては影響しません。

本来はそうあるべきはずですし、逆にいうとそんなことが影響してしまうような自治体に未来はないので気にせず交渉しましょう。

交渉というか、そもそもルール通りに運用してくださいということを伝えるだけなので普通のことです。

最初が肝心

新卒の人はなかなか厳しいものがあるかもしれませんが、最初にはっきりと意志を示しておくことが大切です。

  • 週に何日働くのか
  • どのような業務に従事するのか
  • 学校で任せられる業務は市の定める業務内容と一致しているか

我々は1秒ごとに死に近づいていきます。

その大切な時間をお金の代わりにお渡しするわけですから、絶対に安売りしてはいけません。

無茶苦茶な内容を押し通すのはいけないことですが、ルール通りの業務を任せてもらうということを最初にはっきりさせておかなければなりません。

最初が肝心と書きましたが、勤務条件があいまいになっているのであればいつでも是正を求めて大丈夫です。

嫌われる勇気を持つ

積極的に嫌われる必要はありませんが、嫌われるのを恐れて自分の命の時間を安売りしてはいけません。

ルール通りのことを申し出て嫌うようであれば嫌う側に問題があると割り切って、きちんと申し出ましょう。

とはいえ基本的にそんなに敵ばかりでもないので、勝手に全員味方だと思い込んで正当な要求をしてみることが大事です。

それでも嫌われてしまったらそれはそれ。短期雇用は逆に強みになります。

時間内はしっかりとパフォーマンスを発揮する

これは当然のことですが、ルール通りに運用してもらっているのであれば業務内容には120%の成果で応えましょう。

今学校は少しの時間来てくれる人の力すらも求めています。

人は感情の生き物であることを理解する

ここまで嫌われろだのきちんとルールを守るよう意志を示せだの書いてきましたが、とはいえ相手も人間です。

信頼関係のないままこちらの主張ばかりを押し通す姿勢を見せるのはあまり得策ではありません。

以下のことに気を付けてください。

  • とにもかくにも礼儀正しく
  • 挨拶は相手の顔を見て必ず(返されなくても全員に)
  • にこやかに接する
  • 時間内でできる限り職員とコミュニケーションをとる

正しさが必ず通用するとが限りませんし、そもそも人によって正しさは違います。

非常勤教員として職場と戦うために出勤するわけではありません。

学校教育に貢献して正しく対価を受け取るために出勤しているわけですから、円滑に働けるよう職員と密なコミュニケーションをとることは大切です。

僕自身も忘れそうになりがちですが、日々試行と改善の繰り返しです。

まとめ

今回は非常勤講師をとりまく現状の厳しさとその解決策についてまとめました。

  • 非常勤講師をとりまく環境は厳しいものがある
  • 少しずつ改善される兆しは見え始めている
  • 自分の時間と権利をしっかり守る
  • 礼儀正しくにこやかに接する
  • 職員は基本みんないい人だと思い込んでみる
  • そのうえで嫌われる勇気ももつ

なんか気付けばメンタル面のこと多めに主張していますね(笑)

勤務の面に関しては管理職としっかり交渉しつつ、勤務時間内は最大限学校教育に貢献するという姿勢がいまのところの最適解だと考えています。

なかなか声の上がりにくい職種ではありますが、実は非常勤教員は全国に5万人くらいいます。

モヤモヤと困っている人が5万人もいるのであれば、何とかしたいなぁと思う今日この頃です。

もし非常勤で困っているという方がいれば、ぜひ情報をお寄せください^^

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ABOUT ME
前田ひろあき
教員の複業について日本で一番詳しい者です。 学校の内外を往還する先生を研究実践するNPO「越境先生」代表。 教育系複業家。 現職:任意NPO代表&SchoolTech企業社員&個人事業主/ 過去の職業:複業&小学校非常勤←中学理科教諭←教育大←吉本新喜劇 |